2020年9月から厚生年金保険の標準報酬月額の上限等級が見直し。一部所得層の負担額が増加!?

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(以下の内容は、厚生労働省年金局「現行の厚生年金保険法の規定に基づく標準報酬月額等級の改定について (報告事項)」のうち一部を抜粋し、2020年9月13日現在の情報に基づき、筆者作成)

改正の内容(厚生年金保険法における従前の標準報酬月額の上限等級の見直し)

厚生年金保険法の標準報酬月額の等級区分の改定等に関する政令(令和2年政令第246号)が2020年9月1日に施行されたことにより、2020年9月より厚生年金保険法における従前の標準報酬月額の上限等級(31級・62万円)の上に1等級が追加され、上限が引き上げられました。

改定前の等級表
改定後の等級表
出典:日本年金機構「厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定」

改正の影響を受ける厚生年金の想定被保険者数

2019年3月末の標準報酬月額ごとの被保険者数分布に基づくと、標準報酬月額62万円の被保険者約270万人のうち一部の方を対象に、厚生年金保険料の負担額が増加します。

(参考)厚生年金保険(第1号) 標準報酬月額別被保険者数(2019年3月末)

出典:厚生労働省「結果の概要」

標準報酬月額の上限改定の考え方の経緯

厚生年金保険制度発足以来、上限改定に関する明確な基準は設けられていませんでしたが、1969年改正以降は、被保険者の約95%が上下限を除いた標準報酬月額に該当するよう改定されました。

1985年改正においては、過剰給付を抑制する観点から、男子被保険者の平均標準報酬月額の概ね2倍となるように設定する考え方に改められ、1989年改正以後は、女子も含めた被保険者全体の平均標準報酬月額の概ね2倍となるように設定する考え方に改められました。

2004年改正においては、保険料率の引き上げスケジュールがすべて法定化されたことに伴い、標準報酬月額の上限の考え方を法律に規定し、政令で上限を追加することを可能とされました。

(参考) 標準報酬月額の上限設定の改定の推移

改正年月標準報酬月額の上限考え方
1954年5月1.8万円(12級)賃金の水準、被保険者の報酬の分布状況等を勘案して決定。
1960年5月3.6万円(20級)同上
1965年5月6万円(23級)最高等級に包括される被保険者が全体の5%前後。また、平均賃金の2倍を上限とする諸外国の例等を勘案。
1969年11月10万円(28級)前回改正以後の賃金上昇を勘案して、被保険者の約95%が上限と下限を除いた標準報酬に該当するように改定。
1971年11月13.4万円(33級)同上
1973年11月20万円(35級)同上
1976年8月32万円(36級)同上
1980年10月41万円(35級)同上
1985年10月47万円(31級)男子被保険者の平均標準報酬月額の概ね2倍となるよう設定。
1989年12月53万円(30級)女子も含めた現役被保険者全体の平均標準報酬月額の概ね2倍となるように設定。
1994年11月59万円(30級)同上
2000年10月62万円(30級)同上
2004年10月62万円(30級)上記改定ルール(現役被保険者の平均標準報酬月額の概ね2倍に当たる額を基準に改定)を法定化。
厚生労働省年金局公表の「現行の厚生年金保険法の規定に基づく 標準報酬月額等級の改定について (報告事項)」を参考に、筆者作成。

2004年改正における標準報酬月額の上限改定の考え方

標準報酬月額の上限は、全厚生年金被保険者の平均標報(標準報酬月額の平均額)の概ね2倍となるように設定されています。

また、年度末時点の全厚生年金被保険者の平均標報の2倍が、標準報酬月額の上限を上回る状態が継続すると見込まれる場合、その年の9月1日から政令で上限を引き上げることができることとされています。

2016年3月末より各年度末時点で、全厚生年金被保険者の平均標報の2倍が標準報酬月額の最高等級である62万円を超えている状況が続いており、今後も継続する蓋然性が高いことから、今回の改正に至りました。

(参考) 最近の3月末時点における標準報酬月額の平均の推移

全被保険者の平均標準報酬月額 【A】平均標準報酬月額の2倍に相当する額 (=【A】×2)
2016年3月末319,721円639,442円
2017年3月末318,656円637,312円
2018年3月末320,100円640,200円
2019年3月末322,404円644,808円
出典:日本年金機構「厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定」

厚生年金保険の標準報酬月額の上限等級の今後の動向

今回の改正は、2004年以来16年ぶりの改定になりますので、当面の間は、厚生年金保険の標準報酬月額の上限等級が改正されることはないと思われます。

ニュース等でもあまり話題にならないのは一部の高所得層を対象にした負担額の増加(被保険者にとっては、厚生年金受給額の増加をもたらすプラスの効果もある)というのもあるのかもしれません。

引き続き厚生年金保険料、介護保険料および健康保険料の今後の動向については注目していきたいと思います。

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