(以下の内容は、全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」等を参考に、2020年9月20日現在の情報に基づき、筆者作成)
改正の内容(介護保険料率の見直し)
全国健康保険協会からの公表に基づき、2020年3月より、介護保険に加入している被保険者の介護保険料率が1.73%から1.79%に引き上げられました。
介護保険料は、当月分を翌月に支払う仕組みとなっているため、3月に値上がりした保険料は4月に支払うことになります。
(参考)直近10年間における一般被保険者に対する介護保険料率の推移
年度 | 介護保険料率 |
2009年3月分(4月30日納付期限分)〜 | 1.19% |
2010年3月分(4月30日納付期限分)〜 | 1.50% |
2011年3月分(5月2日納付期限分)〜 | 1.51% |
2012年3月分(5月1日納付期限分)〜 | 1.55% |
2014年3月分(4月30日納付期限分)〜 | 1.72% |
2015年4月分(6月1日納付期限分)〜 | 1.58% |
2017年3月分(5月1日納付期限分)〜 | 1.65% |
2018年3月分(5月1日納付期限分)〜 | 1.57% |
2019年3月分(5月7日納付期限分)〜 | 1.73% |
2020年3月分(4月30日納付期限分)〜 | 1.79% |
介護保険料の被保険者について
介護保険の加入者は65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳の第2号被保険者に区分されています。
介護保険の加入者は、介護が必要となった場合に、介護保険サービスを利用することができます。
区分 | 第1号被保険者 | 第2号被保険者 |
---|---|---|
年齢 | 65歳以上の人 | 40歳以上65歳未満の公的医療保険加入者 |
介護保険サービスを利用できる人 | 要支援・要介護の認定を受けた人 | 16の特定疾病※が原因で要支援・要介護となった人 |
保険料 | 所得に応じて市区町村が決める | 加入している医療保険の算定方法に基づき決まる |
介護保険料率の改定の考え方
市町村は3年を1期(2005年度までは5年を1期)とする介護保険事業計画を策定し、3年ごとに見直しを行い、 保険料は、3年ごとに、事業計画に定めるサービス費用見込額等に基づき、3年間を通じて財政の均衡を保つよう設定されています。
高齢化の進展により、介護保険料は上昇することが見込まれており、地域包括ケアシステムの構築を図る一方、介護保険制度の持続可能性の確保のための重点化・効率化も必要となっています。
(参考)介護給付と保険料の推移

介護保険料率の今後の動向
毎年のよう介護保険料率は改定されていますので、来年の3月も介護保険料率の改定されても違和感はありません。
厚生労働省からも、将来の介護保険料の見通しについて言及されています。
(参考)介護給付と保険料の推移

出典:厚生労働省老健局「日本の介護保険制度について2016年11月」
その他の論点としては、2019年2月より始まった社会福祉協議会介護保険部会での介護保険法改正審議が2019年12月で終了しましたが、国民の負担を強いる改正は全て先送りされた論点がいつ改正されるのかという点です。
先送りされた改正の論点
- 介護保険料の負担年齢の30才への引下げ
- 補足給付対象の所得基準に不動産などの資産を追加の一部
- 介護施設の多床室料を全額自己負担とする
- 居宅介護支援の自己負担1割の導入
- 訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1-2の市町村への移行
- 自己負担2割の対象年収の引き下げ
- 現金給付の導入
上記のうち最も影響が大きいのは、「1.介護保険料の負担年齢の30才への引下げ」と想定されます。財源を確保するために介護保険料の負担年齢を引き下げることで、一人あたりの負担額を軽減する効果もあります。
近い将来、国民の負担を強いる改正がなされることも十分に想定されますので、引き続き厚生年金保険料、介護保険料および健康保険料の今後の動向については注目していきたいと思います。