(以下の内容は、国税庁「平成30年度税制改正」のうち一部を抜粋し、2020年9月1日現在の情報に基づき、筆者作成)
2018年4月の税制改正により国際観光旅客税が創設され、2019年1月7日以降に日本を出国する旅客(国際観光旅客等)に課税し、出国1回につき1,000円が徴収されることになりました。
税制改正の内容(国際観光旅客税の創設)
観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための財源を確保する観点から、国際観光旅客等の出国1回につき1,000円の負担を求める国際観光旅客税が創設されました。
徴収の方法は、航空会社または船舶の国際旅客運送事業者が「特別徴収義務者」となり、オンチケット方式(チケット代金に上乗せ)などで徴収されるものですので、空港での直接の税金の支払いは発生しません。
国際観光旅客税の使途に関する基本方針に基づき、2020年1月に令和2年度(2020年4月1日〜2021年3月31日)観光庁関係予算概要が公表されていますが、それに基づくと540億円(宮内庁管轄分29億円含む)が国際観光旅客税で財源充当される予算になっています。
国際観光旅客税の税収が通年で予算化されるのは平成31年度(2019年4月1日〜2020年3月31日)に続いて2年目です。
<観光庁公表の令和2年度(2020年4月1日〜2021年3月31日)観光庁関係予算総括表の抜粋>
内訳 | 予 算 | 左記のうち、 国際観光旅客税 財源充当額 |
ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備 | 274億円 | 220億円 |
我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化と 観光産業の基幹産業化 | 157億円 | 63億円 |
地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による 地域での体験滞在の満足度向上 | 237億円 | 228億円 |
観光統計の整備 | 7億円 | 0億円 |
その他(経常事務費等) | 7億円 | 0億円 |
合計 | 681億円 | 511億円 |
国際観光旅客税の使途に関する基本方針とは?
国際観光旅客税の創設にあたり、2017年12月22日に観光立国推進閣僚会議において国際観光旅客税の使途に関する基本方針が決定されました。
(1) 訪日外国人旅行者2020年4,000万人等の目標達成に向けて、次の3つの分野に国際観光旅客税の税収(以下、「観光財源」という。)を充当する。
①ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備
②我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化
③地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上
(2) 観光財源を充当する施策は、既存施策の財源の単なる穴埋めをするのではなく、以下の考え方を基本とする。
①受益と負担の関係から負担者の納得が得られること
②先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること
③地方創生をはじめとする我が国が直面する重要な政策課題に合致すること
(3) 使途の適正性の確保
観光財源の使途の適正性を確保する観点から、受益と負担の関係が不明確な国家公務員の人件費や国際機関分担金などの経費には充てないこととする。また、観光財源を充当する3つの分野については、観光庁所管の法律を改正し、法文上使途として明記する。また、予算書においても観光財源を充当する予算を明確化する。
(4) 第三者によるチェック
無駄遣いを防止し、使途の透明性を確保する仕組みとして、行政事業レビューを最大限活用し、第三者の視点から適切なPDCAサイクルの循環を図る。
観光財源および予算の今後の動向
新型コロナウイルスの影響により、訪日外客数・出国日本人数は激減しています。
訪日外客数 | 出国日本人数 | |||||
2019年 | 2020年 | 前期比 | 2019年 | 2020年 | 前期比 | |
1月〜7月 | 1962.5万人 | 395.1万人 | -79.9% | 1120.1万人 | 301.1万人 | -73.1% |
1月〜12月 | 3188.2万人 | ? | ? | 2008.1万人 | ? | ? |
新型コロナウイルスの影響により観光財源が確保できない状況であっても、2021年にオリンピックが控えていることもあり、当初の予算通りに実施せざるを得ない部分も多少あるかと思います。
令和2年度(2020年4月1日〜2021年3月31日)観光庁関係予算に対して実績がどうなるのか、また、令和3年度の観光庁関係予算総括表がどのように公表されるのか、今後の動向にも注目したいところです。